運営委員会通信 (Steering Committee Blog)

(2022年7月13日)

前回(第29回)会合では「投資家が社外取締役に期待すること」をテーマに参加者の間で意見を出し合いました。会合の場で十分にカバーできなかったトピックや掘り下げが足りないと思われる論点、さらには今後の会合で議論を深めるべきテーマについて、運営委員の間で改めて意見を交換しました。

以下簡単に紹介します。

まず前回の議論を補足する論点として次のような指摘がありました。

  • 社外取締役に就任する障壁(兼業禁止規定、過度に厳格な独立性基準など)が取り除かれないと、例えば若くて優秀な人材が就任するのは難しいのではないか。
  • 社外取締役には情報や時間の制約などがあるので、その判断に委ねるアジェンダを重要なものに絞り込む必要があるのではないか。アジェンダ・セッティングの重要性について投資家の間でも十分認識されていない。
  • アジェンダ・セッティング、委員会の設置・運営、社外取締役に対する執行側のサポートなどを含めて、社外取締役という制度を活かせるかどうかには経営トップの姿勢や考えが影響する。

前回の議論でも出された社外取締役の実効性への疑問に関しては、実効性を高めるための優れた工夫を行っている企業の実例が紹介されました。また、現状のスキル・マトリックスの問題点、社外取締役は「守り」だけでなく「攻め」にも貢献するべきか否か、など様々な論点についても意見が出されました。 こうした議論の延長線上で今後のテーマの候補として次の2つが挙げられました。1つは、そもそもボードの役割は何かという本質的な問いです。執行側に属する経営会議と区別されたボードという制度装置に関して、企業によってニーズや役割が異なっていてもおかしくありません。そうであれば上場株式会社におけるボードの役割は一義的に決められるものでなく、多様な建てつけのものが併存してもよいように考えられます。もちろん、こうした問いに法律やコードの観点から答えようとすると議論の幅が広がらない懸念があるので、問題設定の仕方に工夫が必要でしょう。

もう1つは、社外取締役の本質的機能は何かという問いです。少数株主利益の代弁者という側面は確かにあるように思われますが、それが本質かどうかは自明でありません。いま会社には従業員のウェルビーングの増進や社会問題解決への貢献が社会から求められています。これらは株主利益と両立する部分もあるでしょうが、背反と言わずとも両立しにくい部分も多いでしょう。両立が難しいとき、執行側の判断と社外取締役の立場はどのように異なりうるか。また、「攻め」の経営との関連で、執行側を「攻め」にむかわしめるために社外取締役として執行の領域にどこまで踏み込んでいいものか。これらの論点もこのテーマには含まれるでしょう。

今後の投資家フォーラムで取り上げたらいいと思われるテーマについては、皆さまのご意見も是非伺いたいところです。運営委員会までご一報ください。

以上